イチゴ栽培の管理
○イチゴの鉢の置き場所
南側のできるだけ暖かい場所に置いてください。必要であれば、簡易温室を利用したりするのも一つです。それぞれの栽培環境や条件によっても違いますが、たとえば、家の壁が比較的明るい色であれば、壁面近くにイチゴの苗を植えたプランターや鉢を置いて、太陽からの直接光だけでなく、壁面の反射を利用するというのも良い方法です。
太陽からの直接の光と、壁面からの反射でイチゴの苗を温めることができますから、南向き以外の場所でも暖かい環境を作り出すことができるようになります。他にも置き場所を工夫することで、暖かい環境を作り出すことができると思いますので、いろいろ試してみてください。
○イチゴの肥料の選び方と与え方
イチゴを元気に、そして丈夫に育てて、甘い果実を収穫するためには、肥料の選び方と与え方を知ることがとても重要です。
基本的に、イチゴの甘さやおいしさは、肥料次第で決まります。とはいえ、どんな肥料をどのタイミングで、どのくらい与えれば良いのかを掴むには、それなりの試行錯誤や経験が必要になりますから、初めてイチゴを育てる方は、まずイチゴ専用の配合肥料を使ってみましょう。
イチゴ専用の配合肥料には、イチゴがすくすくと育って、甘い実を収穫するために必要な栄養や、病気に対する抵抗力を高めるために必要な成分が、バランスよく配合されていますので、それぞれのパッケージに書いてある与え方や注意事項に従って、使っていただければ大丈夫です。
肥料を与えるタイミングには、大きく分けると、植え付け前に土に混ぜ込む”元肥(もとひ・もとごえ)と、
栽培の途中で与える”追肥(ついひ)”とがあります。
元肥として与える肥料は、植物の種類を問わず、ゆっくり効き目が現れる”緩効性肥料”と呼ばれるタイプの肥料を使います。元肥は、直接植物の根に触れると障害が現れやすくなりますので、基本的には培養土に混ぜ込んだ後、その上に数センチほど肥料を含まない培養土を被せて、その上に苗を植え込みます。
次に追肥は、比較的早く効果の現れる液体肥料などが一般的で、園芸店やホームセンターなどに並んでいる、土に挿すだけのアンプル剤なども追肥用の液体肥料です。もちろん固体の肥料もありますので、用量や使用頻度を正しく守って使う限り、どちらを選んでも大丈夫です。
○イチゴ(苺)の人工授粉の方法
イチゴの花が咲いたら、より確実に果実をつけさせるために、人工受粉を行います。イチゴの花は、本来、虫たちの力を借りて受粉を行う植物です。イチゴの花に集まってきた虫たちが、他のイチゴの花へと移っていく過程で、虫たちの体に付いた花粉も一緒に運ばれて受粉するというわけです。このように虫たちを媒介して受粉を行う花たちを、”虫媒花(ちゅうばいか)”といいます。
ところが、イチゴを栽培している地域や場所によっては、せっかくイチゴの花が咲いても、なかなか虫たちが集まって来てくれない場合もあります。たとえば、都市部や市街地の高層マンションのベランダなどがそうですね。
そこで、虫たちの代わりに、受粉を助ける作業が必要になります。そのための作業が人工受粉です。
人工授粉の作業自体は、難しい事ではありません。毛先の柔らかい毛筆用の筆や綿棒などを使って、咲いているすべての花の中心付近を、順番に軽く撫でてあげるだけで完了です。筆の毛先が虫たちの代わりというわけですね。受粉をより確実にするために、この作業を数回繰り返しておくと安心です。
○成長期のイチゴ(苺)の管理方法
成長期のイチゴの管理方法には、いくつかの大切なポイントがあります。
イチゴの苗を病害から守るために、雨に当てないように気をつけておきましょう。雨はイチゴなどの植物にとって恵みをもたらす大切なものですが、様々な細菌や病原菌も運ばれてくるというデメリットの部分があることを、心に留めておいてくださいね。
それから、普段の水やりの際に、霧吹きを使って、葉の裏側まで十分に葉水をかけておくことも、病害虫からイチゴの苗を守るための大切な作業です。ちょっと面倒な作業ではありますが、イチゴの苗を枯らしてしまう最大の原因とも言えるハダニの予防には、この葉水の散布が効果的です。
肥料を与える時のタイミングと用量は、肥料のパッケージに書かれている説明書に従って、必要以上に肥料を与えすぎないように気をつけてくださいね。
より元気良く育ってくれるようにとの思いから、つい肥料を頻繁に与えたり、たくさん与えたりしてしまいがちですが、適切な用量とタイミングを守らずに肥料を与えることは、かえってイチゴの苗を弱らせたり枯らしてしまったりする原因にもなります。
肥料の与えすぎは、根腐れや肥料焼けをはじめとしたトラブルの大きな原因となりますので、くれぐれもご注意ください。
イチゴの苗を適切に管理するためには、苗を植えた鉢やプランターの置き場所も重要です。
イチゴの鉢は、風通しの良い場所(または、風が何となくあたるよう扇風機の利用も一つです。)に置いて、できるだけ太陽の光を浴びさせるようにしましょう。風通しの悪い場所に置いて管理すると、カビが発生しやすく、イチゴの苗に大きなダメージを与える灰色カビ病の原因ともなりますので、くれぐれもご注意ください。
二酸化炭素(CO2)の管理について、通常屋外では、350~380ppmの濃度で空気中にCO2が存在します。ハウス栽培では、400~750ppm以上の濃度で管理しています。ご自宅にある石油ファンヒーターは、実はものすごいCO2発生装置なのです。なので日中のイチゴが光合成をしている時間に少しCO2を与えてあげられるといいと思います。
○イチゴ(苺)の冬の管理と寒さ対策
本格的な冬の訪れとともに、植えつけた時には鮮やかな緑色をしていたイチゴの苗の葉も、次第に茶色く萎れて枯れていきます。ただし、これはイチゴの苗の、ごく自然な生理現象で、よく見ると新しい葉がちゃんと残っていますから心配はいりません。
ただ、この茶色くしおれた葉をそのままにしておくと、カビの発生の原因となったり、病気の引き金にもなりますので、茶色く変色した葉は、葉柄ごときれいに取り除いておいてください。
またこの頃になると、新しい子株の源となるランナー(匍匐枝)が伸び始めます。ランナーは、子株から新しいイチゴの苗を増やすために欠かせないものですが、子株をから苗に育てる作業は、6月頃になってから行いますので、この時期に伸び始めたランナーは、株の負担を軽くするために、根元からすべて取り除いてしまいましょう。
イチゴは、基本的には寒さに強い植物ですが、強い北風や霜にあたるとさすがに弱ってしまいます。
そこで、冬の寒さが本格化したら、置き場所を陽当たりの良い室内の窓際に移すか、冬の寒さにあたって弱ってしまわないように防寒対策をして冬を乗り切ります。
○イチゴ(苺)の収穫
イチゴは、花が咲き終わった後、およそ35日~50日で果実が成熟し、収穫期を迎えます。
収穫できる期間は、育てている地域や気候、育てている品種によっても違いますが、早ければ春先の4月頃から7月頃まで収穫することができます。
また、ビニールハウス栽培(促成栽培)では、夜温6度以上(培地温12度)または、夜温10度以上(培地温設定なし)昼間は、ハウス内は、太陽光(晴れの日)で20度以上(10時~14時)で管理できると次々に花が咲いて収穫できます。できれば25度前後で管理できるといいと思います。
イチゴが収穫期を迎えたら、果実全体が赤く色づいていることを確かめながら収獲します。育てている環境や規模によっては、野鳥などに果実が食べられてしまうこともありますので、防鳥ネットなどの対策が必要になることもあります。
また、この時期、イチゴの親株からランナーと呼ばれる匍匐枝(ほふくし)が伸び始め、子株ができるようになります。
もし、子株を育てて新しい苗を作る予定がないのであれば、園芸用のハサミなどを使ってランナーを根元から取り除いておきましょう。ランナーを残しておくとその生長のために養分が奪われてしまいますので、取り除いておくほうが果実の充実につながります。
Comments